イタリア料理によく登場するハーブのルッコラは、独特な風味を持つだけの食材ではありません。実は、栄養豊富で健康に良い野菜でもあったのです。今回はそんなルッコラの知られざる効能や栄養価を詳しくご紹介したいとい思います!
ルッコラについて
ルッコラはアラブナ科の1年草ハーブです。年中各地で栽培・出荷されているため旬を感じにくい食材ですが、元来は地中海の温暖な気候に適したハーブです。日本での旬の時期は、地中海に似た穏やかな気温である春と秋頃です。日本では、トッピングやサラダに混ぜるハーブという立場ですが、イタリアでは野菜のように売られています。
ルッコラは地中海沿岸が原産で、古代ギリシャや古代ローマ時代に食用ハーブとして栽培されていました。古代エジプトでも食されており、クレオパトラが美しさを保つために好んでルッコラを食べたと言われています。古代ローマでは、ルッコラに壮健効果があると信じられていました。古来より食べられてきた植物でしたが、急速に広まったのは1990年代からでした。日本では、同時期にイタリア料理が一般的に広まったので、それに伴いルッコラが知られるようになりました。
イタリア語ではrucola(ルッコラ)、フランス語ではroquette(ロケット)、英語ではrocket salad(ロケットサラダ)、arugula(アルガラ)と呼ばれています。成長が早く、ロケットのように立つということが語源です。
主な成分と特徴
独特な辛味と炒ったごまのような香りがするルッコラは、主に葉が可食部です。ルッコラの辛味は、刺激成分のアリルイソチオシアネートからでています。わさびやからし、大根にも含まれており、強い抗酸化作用と殺菌効果、食欲増進効果を持っています。また、唾液や胃液の分泌を促し、消化不良や腸の動きを整えるため、健康に良いとされています。
ルッコラには、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄や葉酸などのミネラルが含まれています。ミネラルは免疫予防や疲労回復など身体的効果はもちろん、精神状態を安定させたりもするので、ミネラルの多い食材は積極的に取り入れたいですね。
*********少し難しい話**********
正確に言うとイソチオシアネートが直接アブラナ科に含まれるわけではありません。
イソチオシアネートはアブラナ科の緑色野菜を生の状態で刻んだり、ミキサーにかけたり口の中で噛み砕くことによって生成されます。ルッコラやワサビなどアブラナ科の緑色野菜にはシニグリンという配糖体(グルコシノレート)が含まれており、細胞壁が壊れることで細胞膜に存在する酵素「ミロシナーゼ(チオグルコシダーゼ)」が放出され配糖体と細胞内で混ざりイソチオシアネートが生成されます。
イソチオシアネートが生成される前に加熱したり水に浸したりすると、イソシアネートを生成するための酵素「ミロシナーゼ」が不活性化されるためイソシアネートが生成されません。
逆に言うと加熱はイソチオシアネートを生成するために必要な酵素「ミロシナーゼ」を不活性化させるだけなので、すり潰したり傷をつけイソチオシアネートが生成された後に加熱してもイソチオシアネートが失われるわけではありません。
よく言う「加熱すると効果が失われる」わけではなく、「加熱するとイソチオシアネートが生成できなくなる」が正しいので、もし加熱をしたいのであれば、刻んだりすり潰してから加熱してください。
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ルッコラはβカロテン(ビタミンA)、ビタミンC、ビタミンKなどのビタミン類が豊富に含まれています。体内でビタミンAに変化するβカロテンは体内の粘膜を丈夫にし、皮膚の新陳代謝を活発にします。また、夜盲症の予防や視力低下の抑制など、視力を正常に保つ役割を持っています。脂溶性のビタミンKは、カルシウムが骨に沈着するのに必要なタンパク質を活性化する効果があり、骨作りに重要な栄養素です。
ルッコラと他の葉物の栄養比較
ルッコラ(生/100g) | アイスバーグレタス(生/100g) | クレソン(生/100g) | |
炭水化物 | 3.65g | 2.97g | 1.29g |
タンパク質 | 2.58g | 0.90g | 2.30g |
脂質 | 0.66g | 0.14g | 0.10g |
食物繊維 | 1.6g | 1.2g | 0.5g |
カルシウム | 160mg | 18mg | 120mg |
鉄分 | 1.46mg | 0.41mg | 0.20mg |
マグネシウム | 47mg | 7mg | 21mg |
リン | 52mg | 20mg | 60mg |
カリウム | 369mg | 141mg | 330mg |
ナトリウム | 27mg | 10mg | 41mg |
ナイアシン | 305μg | 123μg | 200μg |
葉酸 | 97μg | 29μg | 9μg |
ビタミンC | 15mg | 2.8mg | 43.0mg |
βカロテン
(ビタミンA) |
2373IU | 502IU | 3191IU |
ビタミンK | 108.6μg | 24.1μg | 250.0μg |
似ている食材:セルバチコ
セルバチコはルッコラとよく似ている植物です。同じアブラナ科で、味はとても似ています。ごまの風味、辛味と苦味がありますが、セルバチコの方が苦味と風味が強いです「野生のルッコラ」とも言われるセルバチコは、生命力が強く多年草なので、一度植えると株は数年育ちます。ルッコラは一年草なので、花が落ちた後は枯れます。セルバチコは、ビタミン類やミネラル、アリルイソチオシアネートが含まれているので、栄養素はルッコラとほぼ同じです。ルッコラと同じように、サラダやパスタに混ぜたり、ピザにのせたり、肉料理の付け合せに使えるので、ルッコラの代用品としてセルバチコもおすすめです。
ルッコラの食べ方
日本では少量を料理の風味付けとして利用しますが、イタリアでは生野菜のように食べ、焼き上がったピザやカルパッチョ、パスタの具材として一般的に使用されます。
一般的な食べ方としては、葉をほうれん草やクレソンと混ぜ、サラダにしたり、サンドイッチやバーガーなどの具材として活躍します。加熱すると辛味と苦味が消えるので、おひたしや炒め物にも向いています。チーズや生ハム、オリーブオイルとの相性も良いので、前菜やカルパッチョ、おつまみのお供にも最適です。
ルッコラの葉色が濃いものほど風味が強く、茎は細く若い葉の方が風味が柔らかいです。黄色になっているものは鮮度が落ちているので、黄緑や緑の鮮やかな色で葉茎がシャキッとしているものが美味しいです。
生のルッコラを一番いい状態で保存するためには、乾燥しないように袋にいれ、茎の部分を水につけ、立てて冷蔵庫にいれます。日持ちはしないので2日くらいで使いきるのが良いです。
新鮮なルッコラを入手して自分でペーストやピューレを作るのも良いですが、手間だと感じる方は、ペーストやピューレにしてあるルッコラ製品を購入されてはいかがでしょう。
ルッコラに摂取制限はあるの?
ルッコラはどの年代の方にも問題なく食べれます。葉酸や鉄分が入っているので、妊婦や妊娠初期、妊娠したい方には積極的にルッコラを食べてもらいたいです。また、子供も食べても健康に影響はありません。ただし、ルッコラは硝酸塩濃度が高く、レタスの2倍程度あると言われています。そのため、EUでは一日50gまでという摂取量の目安があります。適量を他の食材とバランス良く食べるのが理想です。また、ワルファリンを服用中の方は、ビタミンKを含むルッコラの摂取量に気をつけた方が良さそうです。ビタミンKはワルファリンの血液を固まりにくくする作用を弱めてしまいます。
ルッコラを食べると、喉の奥や舌先が痺れる、舌の付け根が痛い、口内が腫れるなどのアレルギー症状が出る場合があります。ハーブ系の植物にアレルギーがある方は注意してください。
ルッコラはどこで購入できるの?
ルッコラはスーパーで一般的に販売されている食品です。ぜひ今後の食事に取り入れてはいかがでしょうか。