野菜や果物、お菓子や飲み物などの食材、服やコスメなどの日用品に「オーガニック」という単語が表記されてることを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか?オーガニックという単語を聞いてどのようなイメージが浮かびますか?「健康に良さそう」「自然?」「科学薬品を使用してない?」などのイメージが浮かぶ方も多いかと思いますが、そもそも「オーガニック」とはどういう意味なのでしょうか?「オーガニック」は何を示しているのでしょうか?今回は、オーガニックという単語に対し「無農薬?」「なんか健康に良さそう」という漠然としたイメージを持っている方向けに、オーガニックという言葉の定義を日本標準と世界標準どちらも見ながら解説していきたいと思います!
目次
オーガニックの意味
「オーガニック」をいろいろな辞書や百科事典で調べてみました。
オーガニック【organic】[形動]
化学肥料や農薬を使用しない野菜や、添加物を入れていない食料品などをさす言葉。「―パスタ」デジタル大辞泉
オーガニック【organic】
有機栽培,有機農業。また,その農産物。広く,畜産品を含めた生産物をいう場合がある。大辞林 第三版
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オーガニック
オーガニックとは〈有機の〉という意味で、通常は農薬や化学肥料を使わず有機肥料によって生産された農産物をいう。アメリカでは1990年に〈有機食品生産法〉が制定され、農薬や化学肥料などの合成化学物質を使用せずに生産され取り扱われた農産物で、過去3年間に合成化学物質を含め禁止物質を使用した耕地で生産された農産物ではないこと、といった厳しい規定がなされている。百科事典マイペディア
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organic
of food : grown or made without the use of artificial chemicalsMerriam-Webster Learner’s Dictionary
www.learnersdictionary.com
これらから、オーガニックは:
- 「有機の」という意味
- 通常農薬や化学肥料を使わず、有機肥料によって生産された(有機栽培、有機農業)の有機農産物(畜産物含む)
- 野菜や食料品
ということを説明しています。オーガニック食品は有機栽培で作られた食べものを示していますね。
有機食品(オーガニックフード)って何?
有機食品は、何をもって「有機」「オーガニック」なのでしょうか?農薬を使っていなければいいのでしょうか、それとも化学薬品を使用していなければいいのでしょうか?
日本では、農林水産省はどの食品を「有機」や「オーガニック」と呼んでいいかを検査、認証する制度を設けています。農林水産省の有機食品に関するリーフレットでは、以下の通り育てられた食品を「有機食品」と説明しています:
有機農産物
- たい肥などで土作りを行なう
- 種まきまたは植え付け前の2年以上に禁止された農薬や化学肥料を使用しない
- 土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させる
- 農業生産に由来する環境への不可を出来る限り低減
- 遺伝子組換え技術を使用しない
2年以上前に土作りの段階で化学肥料や禁止された農薬を使用せず、遺伝子組換え技術を使用しないのが主な有機農産物を育てるポイントです。ただし、一部の農薬の使用は認められているので無農薬とは限りません。
有機畜産物
- 環境への負荷をできる限り低減して生産された飼料を与える
- 動物用医薬品の使用をさける
- 動物の生理学的、行動学的要求に配慮して育てた家畜、家きんから生産する
飼料は主に有機農産物を与え、病気予防のために抗生物質などを使用しせず、野外への放牧などをしてストレスを与えず飼育し、遺伝子組換え技術を使用しないことがオーガニック畜産物を育てることがポイントです。
有機加工食
- 物理的または生物の機能を利用した加工方法を用いる
- 科学的に合成された食品添加物及び薬剤の使用を避ける
- 原材料は、水と食塩を除いて、95%以上が有機農産物・有機畜産物・有機加工食品
食品添加物や薬剤の使用を極力避け、水と食塩を除く95%以上が有機農産物、有機畜産物、または有機加工食品であり、遺伝子組換え技術を使用しないことが有機加工食をつくるポイントです。
ただし、上の通り育てただけでは、製品を「有機」や「オーガニック」と名乗って出荷、販売できません。まずは「有機JAS認定事業者」になる必要があります。この認定事業者になるためには、農林水産大臣に登録された第三者の「登録認定機関」に書類申請を行ない、実地調査されたあとに法的に適合されているか判定されます。
有機JAS規定は、日本で採用している有機規定で、世界には別の基準を持った認定機関があります。その認定機関によってオーガニックフードの定義が異なります。ですが、どの機関も化学薬品をできるだけ使わず、環境負荷をおさえ、自然を守ることが根底にあります。
どれが有機食品(オーガニックフード)?
画像引用:www.maff.go.jp
スーパーや食品店で沢山の野菜や果物、加工食品があり、どれが有機栽培されているか分からないと不便ですよね。農林水産省はこのような混乱を防ぐために、定めたガイドライン(JAS規定)通りに食品が生産している認定事業者のみ使用出来る「有機JASマーク」で消費者に有機食品を判別してもらうようなシステムを運用しています。有機JASマークは、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然界の力で生産された農産物、加工食品、飼料及び畜産物の食品に付けているマークと農林水産省は説明しています。
原則としては、「有機」や「オーガニック」という単語をパッケージに使用するには、JASマーク認定を受けている食品でなければいけません。また、海外から輸入された製品に「organic」などと表示され、有機食品として認識される製品も、販売するには有機JASマークの表示が必要です。有機JASマークがない農産物と農産加工食品に「有機」や「オーガニック」などの名称の表示やこれと紛らわしい表示を記すことは法律で禁止されており、違反した場合は罰金を払う場合もあります。
ただし、広告などに「有機」や「オーガニック」、「無農薬」などの文言を使用するのに制限はありません。そのため、オーガニックな食品を確実に購入したい場合は、パッケージにJASマークが印字されていること、あるいは自分が信頼する販売店で購入することをおすすめします。
なぜ有機(オーガニック)で栽培するの?
農産物に対する安全性や健康指向などに対する消費者の関心の高まりが、有機JAS規格の制定へと繋がりました。農林水産省は、「有機農業の推進に関する法律」の第二条に以下のとおり有機農業の定義をしています:
化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業
また、第三条では以下のとおり有機農業の基本理念を提示しています:
有機農業の推進は、農業の持続的な発展及環境と調和のとれた農業生産の確保が重要であり、有機農業が農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。)を大きく増進し、かつ、農業生産に由来する環境への負荷を低減するものであることにかんがみ、農業者が容易にこれに従事することができるようにすることを旨として、行われなければならない。
国際統括団体IFOAM(アイフォーム=International Federation of Organic Agricultural Movements / 国際有機農業運動連盟)も有機栽培を推進しています。IFOAMは有機農業を以下の通り明示しています
infohub.ifoam.bio:
有機農業は、土壌・自然生態系・人々の健康を持続させる農業生産システムである。それは、地域の自然生態系の営み、生物多様性と循環に根差すものであり、これに悪影響を及ぼす投入物の使用を避けて行われる。有機農業は、伝統と革新と科学を結び付け、自然環境と共生してその恵みを分かち合い、そして、関係するすべての生物と人間の間に公正な関係を築くと共に生命(いのち) ・生活(くらし)の質を高める。
これらの機関によると有機農業を行なう理由は以下5点にまとめられます:
- 環境の負荷を軽減し、持続的な発展を行なう農業
- 土壌や生物多様性、それらの循環を含めた自然生態系を守り、促進する
- 自然生態系へ悪影響を及ぼす化学肥料、農薬などを投入しない
- 遺伝子組換え技術を使用しない
- 伝統と革新と科学それぞれの知識を合わせて、人とすべての生物が公平に共生する自然環境を築く
有機農業は、次世代や先の世代にも豊かな自然環境を託すための手段とも捉えられます。美しい地球をこれからも残すために人々が今出来る選択ですね。
食品以外のオーガニック製品に基準はあるの?
残念ながら、日本では有機JAS認定は食品以外行なわれてなく、他のオーガニック製品への基準を国は定めていません。ですが、海外にはヨーロッパを中心にオーガニックの認定機関があります。これらの機関は、製品を有機やオーガニックと名乗るための規定(原料を栽培する土壌の基準、化学成分の有無や量、動物実験をしないなど)を設けています。これらの機関の認定は、製品が本当に有機栽培された原料で作られているかを証明してくれるので、消費者にとって大事な基準になります。世界のオーガニック認定機関のマークの有無で購入するかを決めてもいいですね。
オーガニックという選択肢
これまで述べてきたように、オーガニックは「有機」という意味で、通常農薬や化学肥料を使わず、有機肥料によって生産されたの有機農産物、畜産物を主に示しています。オーガニック農産物、畜産物と呼ばれる基準はオーガニック認定機関によって基準が異なりますが、環境に負荷をかけないよう、自然と持続的に共生できるように生産していくことが根底にあります。人々の消費活動にオーガニックという選択肢があることは、小さいかもしれませんが環境保全に対して行動出来るということではないのでしょうか。