オーガニックと無農薬、無添加の違いって何?

オーガニックと無農薬、無添加の違いって何?
2016年10月15日 ローラン編集部
In フード全般
オーガニック

「オーガニック」と一緒に「無農薬」や「無添加」という単語を聞いたことがあると思います。健康に良い、環境にやさしいなどのイメージを持つこれらの単語は実際どういう意味なのでしょうか。今回は農産物を中心に、食品に関するオーガニック単語と一緒によく聞く単語を調べてみました。

オーガニックとは?

オーガニックは「有機の」という意味で、主に通常農薬や化学肥料を使わず、有機肥料によって生産された有機農産物を示します(詳しくはこちらに説明しています)。日本も加盟している国際的な食品基準を定めている国際食品企画委員会( =Codex Alimentarius Commission(コーデックス))のオーガニック栽培食品の生産、加工、表示とマーケティングのガイドラインでは、以下をオーガニック農業と説明しています:

Organic agriculture is based on minimizing the use of external inputs, avoiding the use of synthetic fertilizers and pesticides. Organic agriculture practices cannot ensure that products are completely free of residues, due to general environmental pollution. However, methods are used to minimize pollution of air, soil and water …The primary goal of organic agriculture is to optimize the health and productivity of interdependent communities of soil life, plants, animals and people.

有機農業は、外部流入を最小にし、化学肥料や農薬の使用を最小限に抑えることを基本としています。有機農業は、一般的な環境汚染によって、農作物が完全に残留物が含まれていないことを保証できません。ですが、空気、土壌および水の汚染を最小限に抑える手法をとっています……有機農業の主目的は、土壌、動植物や人々の相互依存コミュニティの健康と生産性を最適化することです。

加盟国は、コーデックスのガイドラインをオーガニック農業や製品の基準としています。ですが、各国によってオーガニックの規定が異なります。消費者が購入するオーガニック製品がどのオーガニック認証機関の承認を受けているかによって、「有機」の意味合いが変わります。
 
日本は日本農林規格(JAS規格)を採用しています。
この規格では:

  • 2年以上前に土作りの段階から化学肥料や禁止された農薬を使用しない
  • 遺伝子組換え技術を使用しない

が主なポイントです。ただし、一部の農薬の使用は認められているのでJAS規定の農作物は無農薬と限りません。

無農薬とは?

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ウィキペディアでは無農薬栽培とは、以下の通り説明されています:

無農薬栽培(むのうやくさいばい)は農薬を使わずに米や野菜などの植物を栽培する方法

無農薬栽培は有機栽培と違い、完全に農薬を使用せずに農作物を栽培します。環境に負担をかける、コストがかかる、人体へ影響するなどのデメリットがあるので、農薬を使わない農業者がいます。

ただ、「無農薬栽培」と呼ばれる農産物は、栽培中に農薬を使用していないことが規定です。昨年農薬を使用した土地に、農薬を使用せずに作物を育ててても、無農薬と言えます。残留農薬は農薬使用の内に含まれないので、作物にまったく農薬が使用されていないとはいえないかもしれません。

現在、無農薬栽培などの表示をして、農作物を販売することは禁止されています。それらの農作物は「特別栽培農産物」として表示できます。

特別栽培農産物とは?

農林水産省は、農産物の表示に関する「特別栽培農産物制定に係るガイドライン」を制定し、最新の改正は平成19年に行われました。
特別栽培農産物は、農作物が生産された地域の節減対象農薬及び化学肥料の使用状況(慣行レベル:地方公共団体が策定または確認した透明で公正な基準を削減割合の算定の比較基準)と比べて、

  • 削減対象農薬の使用回数が50%以下(有機農薬物のJASマーク規格で使用可能な農薬を除く)
  • 化学肥料の窒素成分量が50%以下

で栽培された農産物です。特別栽培農産物は、加工したものを除く野菜、果物、並びに乾燥調整している穀類、豆類、お茶などで、不特定多数の消費者に販売されるものを指します。

ガイドラインに従うと、販売する製品に下の表示禁止規定がつくようになりました。

  • 無農薬栽培農産物
  • 無化学肥料栽培農産物
  • 減農薬栽培農産物
  • 減化学肥料栽培農産物 などの表示

「無農薬」や「無化学肥料」の表示禁止規定は、一切の残留農薬などを含まないとの間違ったイメージを与えやすく、優良誤認を招くため、表示禁止事項となりました。

「改正ガイドラインは法的な強制力はありませんが、一定のルールに従い生産、流通すれば消費者の信頼を得ること、生産者の努力が評価されることにもつながります…」と特別栽培農産物改正表示ガイドラインに書いてあります。ほとんどの生産者は改定ガイドライン通りに表示を切り替えているとは思いますが、表示方法は生産者の判断になることも考えられますので、自身で調べ、信頼出来るところから商品を購入するのが一番良いと思います。

無添加とは?

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無添加は、特定の物質が使用されていないということです。近年「食品添加物は危険」というイメージから、「無添加」製品は安心というイメージが定着しています。そのため、「無添加」と表示がされている製品が多いですが、添加・無添加という意味が曖昧な場合があります。

食品添加物とは

食品衛生法第4条では、添加物を以下の通り定義しています:

添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、
食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物をいう。

食品に添加物を使用することで、味を整えたり、長期保存を可能にしたり、色や香りをつけ、豊かな食生活が送れるようになりました。
 
食品添加物には、4つに分類されます:

  1. 指定添加物
    安全性と有効性が確認され、日本が使用を認めたもの(平成27年9月18日時点 449品目)原則として、厚生労働省が指定することになっています。指定添加物は年々増加しています。
  2. 既存添加物
    日本ですでに使用され、長い食経験があるものについて、例外的に使用が認められている添加物(平成26年1月30日時点 365品目)
  3. 天然香料基原物質
    植物、動物を起源とし、着香の目的で使用されるもの(約600品目例示)
  4. 一般飲食添加物
    通常、食用として用いられるが、食品添加物として使用されるもの(約100品目例示)

食品添加物の使用目的別に分類すると、以下に分けられます:

  1. 製造や加工のために必要なもの
  2. 風味や外観を良くするためのもの
  3. 保存性を良くし食中毒を防止するもの
  4. 栄養成分を強化するもの

また、加工助剤やキャリーオーバー、栄養強化目的で使用されているものは、食品添加物の表示を省略することが出来ます。
 
加工助剤:食品の加工の際に使用されるが、

  1. 完成前に除去されるもの
  2. その食品に通常含まれる成分に変えられ、その量を明らかに増加されるものではないもの
  3. 食品に含まれる量が少なく、その成分による影響を食品におよぼさないもの

キャリーオーバー:原材料の加工の際に使用されるが、次にその原材料を用いて製造される食品には使用されず、その食品中には原材料から持ち越された添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの。
例:せんべいの味付け用に、安息香酸(保存料)を使用したしょうゆを用いたとしても、当該添加物が最終食品であるせんべいの保存料として効果を持たない場合にはキャリーオーバーに該当
 
栄養強化:不足した栄養素を食物に添加して補うために使用されるビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類。同じ添加物でも、栄養強化以外で使用する場合は、表示する必要があります。
 
また、バラ売り食品は食品衛生法上、食品添加物表示の義務がありません。

食品添加物は危険なの?

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食品添加物は、基本的に食生活を豊かにするものなのですが、注意したほうが良い食品添加物はあります。日本で認められている食品添加物の中に、海外で使用禁止とされているものが多数存在します。それらの中には、発ガン性や染色異常があると研究されているものがあります。

また、添加物の動物実験の際に問題がなかった物質が、人に対しては異常が出る場合もありました。成人男性に異常が無かった食料添加物の量が、乳幼児や高齢者にとって反応が出る場合もありました。

食品添加物はすぐに影響が出るより、年単位で身体に蓄積された物質で影響が出ると言われています。たとえ病気になったとしても添加物との因果関係を証明することは出来ないので、責任の所在が明確にならず、自己責任の範疇になります。どの商品を消費するかは、自身で調べ、判断してから購入することをおすすめします。

無添加が「いい」はただのイメージ?

消費者庁の食品表示企画課が平成27年3月に発表した「食品表示基準Q&A」で以下質問と回答がありました:

Q.「添加物は一切使用していません」、「無添加」などと表示をすることはできますか。
 
A. 通常同種の製品が一般的に添加物が使用されているものであって、当該製品について添加物を使用していない場合に、添加物を使用していない旨の表示をしても差し支えないと考えます。

ただし、加工助剤やキャリーオーバー等のように食品表示基準第3条第1項の表の添加物の項の規定により表示が免除される添加物を使用している場合には、添加物を使用していない旨の表示をすることはできません。 また、「無添加」とだけ表示することは、何を加えていないかが不明確なので、具体的に表示することが望ましいと考えます。

さらに、同種の製品が一般的に添加物が使用されることがないものである場合、 添加物を使用していない旨の表示をすることは適切ではありません。

要約すると:

  • 一般的に、同種の製品を作る際に添加物を使用し、自分の製品が添加物を使用していない場合は、「無添加」と表示しても良い
  • 食品表示基準に規定されている表示を免除されている添加物を使用している場合、「無添加」と表示してはいけない
  • 何が「無添加」なのかを明確に表示すべき
  • 通常、製品を作る際に添加物を使用する必要がないものに、「無添加」と表示してはいけない

ということになります。
 
製品に「〇〇無添加」と表示されていていも、その添加物以外の添加物が使用されている場合があります。添加物が一切使用されていない訳ではなく、添加物入りの製品とあまり変わりがない可能性があります。「無添加」と表示することによって、消費者に「安心」や「安全」なイメージを与え、製品を購入するきっかけを作ろうとする戦略で表示することが多いと思われます。

良いイメージから広がる「無添加」の使用

平成28年1月現在、製品「糖類無添加」や「砂糖無添加」の表示が可能になっています。流行している糖質制限や砂糖摂取を控える方をターゲットに企業が販売戦略を作成しているように思えます。

製品に糖類や砂糖が添加されていなくとも、製品の原材料にもともと糖質や糖類(果糖など)が含まれている場合もあります。ですが、「無添加」の表示によって、それらが製品に全く入っていないようなイメージで販売する戦略に見えるので、消費者が「無添加」という表示がどういう意味なのかを知っておく必要があります。





最後に

「オーガニック」や「無農薬」「無添加」などの言葉は、消費者に「安心」「安全」「健康」をイメージさせます。しかし、製品のイメージと製品に使用されている材料は真逆の場合もあるかもしれません。健康と安全は自分自身で守ることが大事でしょう。