最近南米原産の食材がスーパーフードとして関心を集めています。中でもキヌア、アマランサス、そしてカニワの南米穀物が栄養豊富であると注目されています。これら3種類の植物は外見が非常に似ていますが、どのような違いがあるのでしょうか。
この記事ではこれら3種の味の違いなどを詳しく解説していきたいと思います。
目次
キヌア・アマランサス・カニワは兄弟
結論から言うとキヌア、アマランサス、カニワは同じヒユ科の兄弟で、食感や栄養価に若干の違いはあるものの、ほぼ同じものと考えて問題ありません。
キヌアとカニワはアガサ属、アマランサスヒユ属(アマランサス属)という違いはありますが、かなり親しい兄弟の品種と言って良いでしょう。
またどれもグルテンフリーです。
サイズと色の違い
キヌアとカニワ、そしてアマランサスは全てとても小さな種です。ですが若干の違いはあります。
キヌアは一粒が約2mm〜2.5mmの大きさで、カニワとアマランサスの一粒はキヌアの半分程度の約1mm〜1.5mmです。
キヌアには様々な色のものがあります。赤、象牙、黒の種類があり、味もそれぞれの品種によって異なっています。
対してカニワは基本的に濃い赤茶色や茶色の種で、食用のアマランサスの種は白色です。
色による味や栄養価の違いはほとんどありませんので安心して下さい。
味・食感の違い
味に関してはほとんど違いはありません。キヌアのほうが香りが強いかな〜とは思いますが、栽培状況や調理法での誤差のレベルだと思います。
違いがあるとすれば食感でしょう。やはりキヌアはアマランサスやカニワに比べると2倍近い大きさのため、キヌアは噛みごたえがあり主食として使用できると思います。
アマランサスとカニワは茹でたり蒸したりしてもごまサイズですので、単体で食べるというよりはなにかに混ぜるのに向いています。
キヌア・アマランサス・カニワはそれぞれ代用可能?
若干の味や食感の違いはありますが、基本的にはそれぞれ代用可能です。例えばキヌアのレシピにアマランサス、カニワで代用するのも問題ありませんし、逆でも問題ありません。
唯一注意していただきたいのは、調理時間の違いです。キヌアに比べアマランサス、カニワは粒が小さいため火が通りやすく、調理時間は短めになります。
アマランサス⇔カニワで代用する場合は調理時間はほとんど気にする必要はありませんが、キヌア⇔アマランサス・カニワで代用するときは調理時間を気持ち長め・短めに調整してあげる必要があります。
ただあくまで代用ですので、基本的にはレシピどおりのものを使用するのをおすすめします。
栄養
ペルーの国立農業大学、国立中央大学と国際ポテトセンターの共同研究文献からキヌア、カニワ、アマランサスの栄養値の比較を紹介します。
キヌア、カニワとアマランサスを比較すると、カニワが一番炭水化物の量が少なく、タンパク質、脂肪、食物繊維の量が多いです。キヌアとアマランサスはミネラル成分が多く、マグネシウムと銅の含有量は他穀類の比較して群を抜いています。また、キヌアとカニワは鉄分とカルシウムが多いです。
穀類とアンデス山系穀物の組成(乾物 mg/100g)
炭水化物 | タンパク質 | 脂肪 | 食物繊維 | 灰分 | |
マニトバ小麦 | 74.1 | 16 | 2.9 | 2.6 | 1.8 |
イングリッシュ小麦 | 78.6 | 10.5 | 2.6 | 2.5 | 1.8 |
大麦 | 78.1 | 11.8 | 1.8 | 5.3 | 3.1 |
からす麦 | 69.8 | 11.6 | 5.2 | 10.4 | 2.9 |
ライ麦 | 80.1 | 13.4 | 1.8 | 2.6 | 2.1 |
ライ小麦 | 78.7 | 15 | 1.7 | 2.6 | 2 |
米 | 71.2 | 9.1 | 2.2 | 10.2 | 7.2 |
とうもろこし | 80.2 | 11.1 | 4.9 | 2.1 | 1.7 |
ソルガム | 79.7 | 12.4 | 3.6 | 2.7 | 1.7 |
キヌア | 72.6 | 14.4 | 6 | 4 | 2.9 |
カニワ | 63.4 | 18.8 | 7.6 | 6.1 | 4.1 |
アマランサス | 71.5 | 14.5 | 6.4 | 5 | 2.6 |
アンデス山系穀物の糖度(g/100 g 乾物)
ブドウ糖 | 果糖 | 白糖 | 麦芽糖 | |
キヌア | 1.7 | 0.2 | 2.9 | 1.4 |
カニワ | 1.8 | 0.4 | 2.6 | 1.7 |
アマランサス | 0.75 | 0.2 | 1.3 | 1.3 |
穀類とアンデス系穀物のミネラル成分(mg/100g 乾物)
カルシウム | マグネシウム | ナトリウム | カリウム | 鉄 | 銅 | 亜鉛 | |
小麦 | 48 | 152 | 4 | 387 | 4.6 | 0.6 | 3.3 |
大麦 | 52 | 145 | 49 | 356 | 4.6 | 0.7 | 3.1 |
燕麦 | 94 | 138 | 28 | 385 | 6.2 | 0.5 | 3 |
ライ麦 | 49 | 138 | 10 | 428 | 4.4 | 0.7 | 2 |
ライ小麦 | 37 | 147 | 9 | 487 | 6.5 | 0.8 | 3.3 |
米 | 15 | 118 | 30 | 260 | 2.8 | 0.4 | 1.8 |
キヌア | 94 | 270 | 11.5 | 140 | 16.8 | 3.7 | 4.8 |
カニワ | 110 | – | – | 375 | 15.0 | – | – |
アマランサス | 236 | 244 | 31 | 453 | 7.5 | 1.21 | 3.7 |
引用元:www.infoandina.org
料理法
キヌア、アマランサス、カニワは基本的には同じように調理して問題ありません。キヌアのほうが粒が大きいため、少しだけ調理時間が長くなることだけ注意して下さい。
キヌア、カニワ、アマランサスの種はとても小さいため、外皮を取り除く作業を行いません。また、外皮が食べられる程度に柔らかいため、そのまま調理ができ、プチプチとした食感を楽しめます。
鍋に適量の水で10分〜15分程度茹で、水が少なくなってきたら2〜3分蒸らします。ザルに上げた後、料理のトッピングやスープの具材などに使えます。
アマランサスを加熱するととろみがでるので、茹でる時は水の量を気持ち多めにいれると仕上がりが良くなります。
お米と一緒に炊くこともできますので、その場合はお米の約1割程度の量を入れましょう。水の量はお米を炊く時と同じで問題ありませんが、使用している調理器具によって炊きあがりが変わるので自分の好み合うように水量を調整しましょう。
ヒユ科の植物には、小豆や大豆に含まれているサポニンという苦味やエグみ成分が含まれています。サポニンは水で流れ落ちるので、キヌアの下ごしらえとして2、3回水洗いをする必要があります。また、アマランサスにも微量にサポニンが含まれており、茹でる前に一度洗うことをおすすめします。アマランサスとカニワはとても小さいので、茶こしなど目の細かい網の製品を使うと便利です。
キヌア、カニワ、アマランサスは茹でる以外にも、粉末や押し麦のようなフレークに加工できます。粉末はパンや麺、クッキーなどを、フレークはグラノーラなどを作れます。また、炒ってポン菓子のように調理することもできます。
学問的な分類
キヌアとカニワはヒユ科アカザ亜科アカザ属、アマランサスはヒユ科ヒユ属の植物から取れます。キヌア、カニワ、アマランサスの味は穀物に似ており、同じように調理するので穀物と間違えられやすいですが、イネ科ではないため穀物ではありません。擬似穀物や擬似穀類に分類され、食用部分は穀物ではなく種が正しいです。
栽培に関して
インカ文明では、とうもろこしが重要かつ神聖な食材でしたが、その栽培は標高が低いところに限られていました。トウモロコシの栽培の難しい高地ではトウモロコシの栽培の代わりに、キヌア、カニワとアマランサスの栽培が盛んでした。ですがキヌアやアマランサスといった食材は、スペイン人に征服され文化が変わったため、小麦や大麦、オート麦に置き換えられ、キヌア、カニワ、アマランサスの栽培は一気に減っていくこととなりました。さらに近年では、アメリカが食料援助のため低価格で輸出したアメリカ産小麦の影響や、近代化とメディアによって伝統文化離れによってさらに生産が減少していました。このような背景からこれらの伝統的な食材は限られた地域でしか栽培、消費されませんでしたが、栄養価値が高いスーパーフードとして世界的に注目を浴びたことで、栽培がまた盛んになってきています。
キヌアは南米のペルー、ボリビア以外の地域ではほとんど生産されていませんでしたが、極めて高い栄養価を評価され、南米各国、アメリカ、カナダ、フランス、イギリスなどの欧州、インド、ケニアなど世界各地で育てられ始めています。2011年には国連がキヌアをその突出した栄養価から、世界の飢餓を救える可能性がある穀物とし、国連総会で「国際キヌアの年(International Year of Quinoa)」を2013年に定めるという提案を正式に承認しました。
カニワは、キヌアと同じく、ペルー南部とボリビア南部のアンデス山脈原産の植物です。カニワとキヌアは過酷な高地でも生息しますが、カニワの方がより高度な地域でも栽培できます。カニワは、一年のうち霜が9ヶ月以上降りる、平均気温が10℃以下の環境でも育ちます。そのため、アンデス付近に住む原住民にとって重要な作物なのです。
アマランサスは、メキシコとペルーやグアテマラの中南米原産の植物と言われています。約5000年前より生息しており、アステカ文明にとても重要な役割を担っていました。食料として使われていたのはもちろん、アマランサスの種や葉っぱを治療や宗教儀式のお供え物としても使われていました。日本雑穀協会によると、江戸時代にアマランサスの一種であるヒモゲイトウ(和名)が観賞用植物として存在し、東北地方でアカアワの名前で小規模な食用栽培がされていました。