キヌアは、南米原産の約1m〜2mまで伸びる軟毛で覆われた広葉の一年生双子葉植物です。ヒユ科アカザ亜科アカザ属で擬似穀類に分類します。そのため、キヌアの食用部分は穀物ではなく、種です。キヌアの種は、約2mm〜2.5mmの少し楕円形で、種類によって異なる色をしています。象牙色が多いですが、白や赤の淡い色から茶や黒の濃い色まであります。
約120種あるキヌアは異なった地域や環境で育ち、大まかに5つに分類できます。品種によって、異なった生態学的環境や機構に適応します。
目次
タイプ別のキヌア
山間 | 山岳タイプは海面約2,000m〜3,600mのアンデス山脈の山間に生息します。高く伸び、分枝状に育ちます。 |
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高原 | アルチプラノ高原タイプはチチカカ湖周辺に生息し、丈夫で霜に耐性を持っています。考古学者は、先史時代の墓からこの種のキヌアを見つけたため、古来より栽培されていた種ではないかと推測されています。 |
サラー | サラー(salar)は塩原という意味です。サラータイプのキヌアは、ボリビア塩原周辺原産で、塩分が高いアルカリ性の土に適応しています。苦味が強いですが、高タンパクのキヌアです。 |
海面 | 海面タイプはチリ南部原産で、分枝しない長日性植物です。黄色で苦味が強い種が特徴です。 |
亜熱帯 | ボリビアのアンデス山脈の山間周辺に生息する亜熱帯タイプのキヌアは、植物が十分に成長すると緑からオレンジ色に変化し、白または橙黄色の小さな種が採取できます。 |
インカ帝国では重要で神聖な食物なキヌアは、紀元前5000年から栽培されていた考古学的記録があります。ケチュア語で「chisiya mama」と呼び、「母なる穀物」という意味です。生態学者Cusackさんの研究によると、キヌアはインカ文明や宗教の中でとても重要な位置づけであり、スペインの征服時には伝統的なインカ宗教を根絶するために栽培を抑制されました。また、その頃よりキヌアはとうもろこしやジャガイモのような重要作物として耕作されず、近代では食物が安く輸入できるようになったため、キヌアの栽培はほぼされなくなりました。(参照:exacteditions.theecologist.org)
近年ではキヌアの栄養バランスに注目が集まり、スーパーフードとして世界中に知れ渡りました。南米ボリビア多民族国大統領は、キヌアの高い栄養価と多様な生態系でも生息できる順応性などの特徴が、近年の重要な問題である食料危機の解決策になり得るとして提唱し、2011年12月に国連総会が正式に提案を承認しました。また国連が2013年を「国際キヌア年」と定めたことで、キヌアはさらに知名度を上げています。
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キヌア:主な成分と特徴
ペルーやボリビアに住む栄養失調の子ども達がキヌア入りの料理を食べているほど、キヌアは栄養価値が高いです。栄養配合が良く、タンパク質、脂質、糖質がバランス良く含まれています。キヌアの種は多くの穀物より胚部分が多く、比較的タンパク質量が高いです。また、タンパク質の元となるアミノ酸のアルギニンやリジン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄分などのミネラルが小麦や米より多いです。とうもろこし、小麦、大麦やジャガイモ料理にキヌアを混ぜると、料理の栄養価値が上がり、より満足感が得られます。
穀類とアンデス山系穀物の組成(乾物 g/100g)
キヌア | イングリッシュ小麦 | 米 | |
炭水化物 | 72.6 | 78.6 | 71.2 |
タンパク質 | 14.4 | 10.5 | 9.1 |
脂肪 | 6 | 2.6 | 2.2 |
食物繊維 | 4 | 2.5 | 10.2 |
灰分 | 2.9 | 1.8 | 7.2 |
穀類とキヌアのミネラル成分(mg/100g 乾物)
キヌア | 小麦 | 米 | |
カルシウム | 94 | 48 | 15 |
マグネシウム | 270 | 152 | 118 |
ナトリウム | 11.5 | 4 | 30 |
カリウム | 140 | 387 | 260 |
鉄 | 16.8 | 4.6 | 2.8 |
銅 | 3.7 | 0.6 | 0.4 |
亜鉛 | 4.8 | 3.3 | 1.8 |
穀物とキヌアのアミノ酸含有量(アミノ酸 g/窒素16g)
非必須アミノ酸
キヌア | 米 | 小麦 | |
アスパラギン酸 | 7.8 | 8 | 4.7 |
セリン | 3.9 | 4.5 | 4.6 |
グルタミン酸 | 13.2 | 16.9 | 31.3 |
プロリン | 3.4 | 4 | 10.4 |
グリシン | 5 | 4.1 | 6.1 |
アラニン | 4.1 | 5.2 | 3.5 |
バリン | 4.2 | 5.1 | 4.6 |
チロシン | 2.5 | 2.6 | 3.7 |
アルギニン | 8.1 | 6.3 | 4.8 |
必須アミノ酸
キヌア | 米 | 小麦 | |
スレオニン | 3.4 | 3.2 | 2.9 |
イソロイシン | 3.4 | 3.5 | 4.3 |
ロイシン | 6.1 | 7.5 | 6.7 |
フェニルアラニン | 3.7 | 4.8 | 4.9 |
リジン | 5.6 | 3.2 | 2.8 |
ヒスチジン | 2.7 | 2.2 | 2 |
メチオニン | 3.1 | 3.6 | 1.3 |
シスチン | 1.7 | 2.5 | 2.2 |
トリプトファン | 1.1 | 1.1 | 1.2 |
引用元:www.infoandina.org
キヌアは葉も食べることができます。調理したり、生で食べたりします。また、茎や葉はラマ、アルパカ、ロバ、羊、モルモットなどの食料になります。牛、豚、鶏などの家畜の餌としても適しています。
キヌアの種皮にはサポニンという成分が含まれています。サポニンは苦味やエグみなどの元となる有機化合物の一種で、大豆や小豆などの植物に含まれています。サポニンは、脂肪の蓄積を抑える効果がありますが、過剰摂取しないように注意が必要です。サポニンに含まれている界面活性作用が赤血球の細胞膜を破壊してしまう溶血作用や、悪玉コレステロールと一緒に善玉コレステロールを分解する副作用があります。サポニンは水溶性なので、キヌアを調理する前にしっかり洗うことで除去できます。
キヌアの食べ方
調理前の下準備に少し手間がかかりますが、キヌアの料理は簡単です。サポニンを除去するために、種を泡が出なくなるまで何度か洗うか、水につけ置きする、あるいは種を精米する必要があります。現在、製品化する段階でサポニンを除去したキヌアも販売されています。
伝統的にキヌアは焼いたり、粉状に加工して使用します。発酵してビールを作ることも可能です。ナッツのような風味と調理後もひと固まりにならず、噛みごたえのある触感が特徴です。粉末のキヌアは発酵しないで作るトルティーヤやパンケーキ、ケーキやクッキーなどの焼き菓子に使えます。小麦語とキヌア粉を7対3の割合で混ぜると発酵するパンが作れます。その際、キヌア粉を3割以上にしてしまうと、発酵しづらくなるので気をつけましょう。
また、家庭でキヌアを加工する方法として、ポップコーンのように加熱することができます。十分に熱したフライパンに少量ずつキヌアを入れると、外皮が破裂してポンポン弾けます。加熱したキヌアはシリアルのようにそのまま食べたり、料理にトッピングにしたりできます。茹でる場合は、種が透明になってひげが出てくるまで加熱します。お米と一緒に炊くこともできます。
参考に動画を載せます。
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キヌアに摂取制限はあるの?
キヌアは、年代関係なく誰でも食べることができます。キヌアは穀物ではなく、アレルギーを起こすアレルゲンが含まれていないので、アレルギー反応を起こさない食料として知られています。微量にグルテンを含んでいますが、グルテン反応を起こす程含まれていないため、グルテンフリーとも言えます。ただし、外皮のサポニンに反応を起こす人もいるので、しっかり洗浄してから調理することが必要です。正しく調理をしてもアレルギー反応に似た症状がでる人もいるようなので、注意しながら摂取することをおすすめします。
妊娠初期や妊娠中、妊娠予定の人もキヌアを食べることができますが、食事に加えることが不安な場合は事前に医師との相談の上、摂取することをおすすめします。
キヌア製品はどこで購入できるの?
キヌアは日本でも人気を集めているため、自然食品や輸入食材を取り扱っている店舗で見かけます。また、インターネットでも注文できるので、お好みのキヌアを探すのも楽しいと思います。
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